赤い髪 赤い頬 赤い瞳









「そう言えば、ルキアがよぉ……」



 あぁ、また始まった。

   私の隣で嬉しそうに話しているのは、恋次。

 一応、私の彼氏。たぶん……彼氏。



「見たか?さっきのルキアの顔」

 ほら、また。







 2人きりの時間だって、恋次はいつも『ルキア』『ルキア』『ルキア』って…

…いつも朽木さんの話ばっかり。



 付き合い出したばっかりの頃は、幼なじみである彼女の事を話してくれるのが嬉しかった。

恋次の昔の話も聞けたし、家族みたいに育ったって言ってたから。

家族の話をしてくれてるみたいで、嬉しかったんだ。



 だけどさ……



「ルキアが……」

「ルキアの奴……」



 せっかくの2人きりの時間が、全部朽木さんの話で。

 私、朽木さんとはほとんど話した事もないし、隊だって違うのに。

 すっかり朽木さんの事、詳しくなっちゃったよ。





 出来る事ならもう、聞きたくない。彼女の話。

 出来る事ならもう、聞きたくない。彼女の名前。



 誰も知らない、私の嫉妬心。







「どうした?具合でもわりーのか?」

 私の顔を覗き込んでくる。その優しい顔で、朽木さんの事も見るのかな?

「何でもない」

分かってるんだよ。

 朽木さんは恋次にとって家族と同じに大事な人だって。

彼女の事を女としてどうこう思ってるわけじゃないって。

 でもさ……

「何でもなくねーだろ?泣きそうな顔してんじゃねーか」

 そんな風に頭を撫でるから、涙が溢れてくるのに。

 こうやって大事にしてもらってるって、分かってるんだよ。

 それは、分かってるんだよ。



「俺、何かしたか?」

心配そうな目で私を見るから、だからもうごまかせなくなっちゃうじゃない。

「恋次が……朽木さんの話ばっかりするから」

「はぁっ?」

「だって!!だってさ、せっかく2人でいるのにさ。恋次は私より朽木さんの方

が大事なのかなって……」

 そこまで言ったら、恋次が大きく溜め息をついた。

 怒ったのかも……!そう思って恋次を見上げると……





 そこには、とびきり優しい顔をした恋次が居た。



「恋次……?」



 『ふわり』と、音がしたような気がした。聞いた事がないような、優しい音。

 そんな音と共に、私は恋次の腕の中に居た。



「くだらねーこと気にしてんじゃねぇっつーの」

「くだらなくなんかないもん!」

 止まらない涙と一緒に、吐き出した言葉。

「いや。くだらねーよ」

頭の上から聞こえてきたのは、やっぱり柔らかい声で。

より大事なもんがあるはずねーだろうが」

「でも、朽木さんの事ばっかり……私の名前だって今日初めて呼んだし」

 私の言葉の後、恋次はまた溜め息を。



「バーカ。俺今、結構すげー事言ったんだぞ?シラフじゃ言えねーような事シラ

フで言ったんだぞ?そこに感激しろっつーの」





より大事なものはない』





そう、確かに恋次はそう言っていた。

 そんな事、そんな甘い言葉を今までに言われた事はなかったかも。

「俺が、こうやって抱きしめるのも。幸せにしたいと思うのも。だけだろうが」

 見上げた先にいる連次の顔は……とても真っ赤だった。

「朽木さんは、違うの?」

「だから!あいつはガキの頃から一緒に育ったってだけで

……俺が好きなのはだけだって言ってんだろうが!」



 そんな言葉が嬉しくて。照れくさくて。



「言ってないよ、今初めて言われた」

そんな風にちょっと意地悪言って照れ隠し。

「うるせーよ。んな真っ赤な目しやがって」

「恋次だって、顔真っ赤だよ?」

「るせー」

 抱きしめられたぬくもりの中、真っ赤な目をした私。真っ赤な顔をした恋次。

「うん。私も、恋次が大好き」











「今日、ルキアが……」

 恋次は結局、また朽木さんの話ばっかりで。

 時々溜め息をつきたくなるけど……







 最近は、それ以上に私の名前を呼んでくれるようになった。

それから、時々は『好きだ』ってちゃんと言ってくれるようになった。





 私は、今はそれで充分。



 もし、また不安になったりしたら……きっとまた抱きしめて安心させてくれるから。



 仕方ないから、朽木さんの話も聞いてあげるよ。











〜〜〜〜〜〜あとがき〜〜〜〜〜〜
自分の投稿作品を見直してみたら、やっぱりと言うかなんと言うか
……暗い話ばっかりだったので。
今回は、甘い感じで頑張ってみましたv
糖度は私的にこれが限界です;;



この作品は「碧露草」様の夢小説投稿作品です。
「碧露草」様、ご投稿有難う御座いました。

photo/Sky Ruins