ミディアム・ブルー





「はあ・・・」

は朝からブルーだった。
「どうしてあたしが一緒に行けないんだろ・・・」
神様もケチだよね、とぶつぶつといいながら机につっぷする。
「おい、!手が止まってるぞ!!」
「はぁい」 偶然こっちをみたリーバーに注意され、
は書類の整理を再開した。
もうだいぶ長い時間寝ていない。
仕事が忙しいからだ。
はインクがついて汚れた白衣を見ながらため息をついた。
(どうしてあたしも一緒に戦えないの・・・)
いま、コムイに呼び出されている彼をちらりと見て、
はまた、もう今日で十回は超えただろうため息をついた。

「おい。」

不意に後ろから声がかかり、
びくっと大げさに見える反応では振り返った。
「神田」
後ろで仏頂面をした彼の顔を確認し、
はブルーだったのを隠すかのように元気な声で呼んだ。
彼は顔に、にやりと不気味な笑みをうかべた。
「へ、どうせ俺が任務に行くから寂しいくせにな」
そしてすべて見透かしたぞ、というような目をする。
「だぁれが!!」
は強がって口を尖らせた。
「アンタがどこに行こうべっつにあたしには関係ないしね」
「ま、別にいいけど」

「早く行きなよ。」

口から思ってもいないことがするするととび出して、
は心の中でひそかに涙を流した。
「そういえば神田、なんか私に用?」
「・・・いや」
別に、と彼は不機嫌そうな顔で答える。

「イノセンス、奪われちゃうよ」

その声はかすかに震えていて。
おもわずは顔をそらした。

今度の任務がいつものと違うのは
偶然情報を仕入れたが最もよくわかっていること。

『高Lvのアクマが出現していることを確認した。
狙いはどうやらイノセンスのよう。
伯爵はすでにイノセンスの情報を把握しているから、
Lvが高いアクマを配置したのかもしれない』

まさか、この任務が神田に回されるなんて、
思ってもいなかった。
こんな難しい任務きっともっと強い人なんだって。

でも、

その強い人は、神田なんだ。

「・・・死なないでよ」
「は?」
「無事に帰ってきてよ」
「・・・当たりめぇだろ。」
神田の自身満々の表情を見たけど、
は目頭が熱くなるのを感じた。
(いやだ、神田が負けるわけないのに)
「おーい、神田!」
一緒に任務を組んだ人の声がした。

「・・・チッ・・・」
彼は、いつものように舌打ちをして、
に背を向けた。

「神田ッ!!!」

もうドアを開けている神田のすぐそばまで、
は駆け寄った。

「お守り。」

は自分の宝物のペンダントを神田の首にかけた。
心なしか、彼の顔がつらそうに見える。

「絶対、返してね」
「・・・チッ」

「絶対、あたしに返してね・・・・!!!」

は踵を返した神田に向かって叫んだ。
それから、
「行ってらっしゃい」
と、定番の台詞を言った。
その声は震えていて、は今にも泣き出しそうだった。

「行ってくる」

振り返りもしないで、手を振った彼の後姿を見送り、
は唇をかみ締めた。
(やっぱり、神様はケチだ。)

あたしが、代わりにいけたら、どれだけよかっただろう。





ヒロイン設定科学班です。
初めての投稿でどきどきしております・・・!!
これからどしどし投稿していきたいと思いますので、
よろしくお願いします!

この作品は雨宮 ゆずき様の夢小説投稿作品です。
雨宮 ゆずき様、ご投稿有難う御座いました。

photo/Sky Ruins