涙も笑顔も 朝も夜も 「恋次、また来たの?」 溜め息も出るよ、そりゃ。 恋次が来たのは今週に入って4日目。ちなみに今週はまだ5日目。 死神と言う仕事は、そんなに暇では無いはず。 なのに恋次と来たら……。 「うるせーな!いいんだよ、俺が来たくて来てるだけなんだからよ」 うちの居間にどかっと腰をおろして、あぐらをかく。 「ほら、茶菓子持って来てやったぞ」 ポン、と私の掌に落ちて来たのは、淡い色のこんぺいとうだった。 「……かわいい」 「だろ?の為に作ってもらったんだ」 得意げな顔をするから、憎めない。 昔から恋次は、こうだった。 恋次と出会ったのは、物心ついてすぐだった気がする。 同じ村で家族のように育って来た。この、治安の最悪な村で。 この村は、子供が生きるには辛すぎる場所だった。 混沌とした狂気の中で、皆生きる事に必死で、夜叉のような目をしていた。私たちもきっと同様で、食べ物や飲み物を盗んだり人を騙したり、そうやって生きて来たような気がする。 もっとも、お腹がすくのは霊力を持った特別な人だけ。 恋次やルキアのような、限られた人間だけだった。 生きるのが苦しくて辛かった。仲間が1人、また一人と倒れて亡くなっていった。 「俺達、死神になる」 幼い日の恋次は、そう言った。 俺達って言うのはもちろん恋次とルキアの事。霊力を持たない私は、ただ頷いて応援する事しか出来なかった。 「俺、絶対死神になっての事守ってやるから!待ってろよ!」 出発の日、恋次はそう言って私を抱きしめた。 遠ざかる背中で、ルキアが恋次をからかっているのが分かったけど。私はただただ寂しくて……何日も泣き続けた。一人になる事が、何よりも心細かった。 「お前!、子供生んだのか!?誰の子供だ!!しかも7人も!?」 久しぶりに帰って来た恋次は、そうやって顔面蒼白になって私の肩を揺さぶったっけ。 「んな訳ないでしょ。この村の子供達よ。ここで面倒見てるの」 私は、恋次達が出て行った後。村を彷徨う傷だらけの子供達を家に招き入れた。 亡くなってしまった仲間達と同じような子供を、もう見たくはなかったから。 私には、それしか出来なかった。 それを聞いた恋次はホッとしたような顔をして、何年ぶりかで私を抱きしめた。 「あ〜!!」 子供達がそれに気づいて大騒ぎをすると、恋次は慌てて私から離れて大きな声で子供達を呵った。 「何だぁ!?このくそガキが!!切られてーのか?ああん!?」 「、何笑ってんだよ。気持ち悪りいな」 「あ、ごめん」 つい、昔の事を思い出して笑ってしまっていた。 「思い出し笑いかぁ?知ってるか?思い出し笑いをする奴はな、」 「うるさいな〜」 立ち上がって、お湯を沸かす。 「ガキどもは?」 「遊びに行ってるよ。元気な盛りだから」 「そうか」 珍しく恋次が黙り込んだから、何を思い出して笑っていたのか話してあげた。 恋次達の出発の日の事。 初めて帰って来たときの事。 「懐かしいよね」 恋次に背中を向けてお茶を入れながら、笑っていた私。 「」 急にごく近い背後で名前を呼ばれたかと思ったら、振り返る前に私は恋次に抱きすくめられていた。 「恋次?どうしたの?」 後ろから抱きしめられている為に、その顔は見えないけど。抱きしめられるのは初めての事じゃないから、余裕はある。 「恋次?」 名前を呼ぶと、左手をとられた。 そしてその薬指に、スッとはめられたのは銀色の綺麗な指輪。 指輪? その真意が分からずに、ただじっとそれを見つめた。 「あの時、出発の日に言った言葉。今でも忘れてねーよ。俺は死神になってを守る。そう言った。で、俺はこうして死神になった」 抱きしめられている腕に、力がこもった。 「漸く、を守れるような男になった。副官になれたんだ。の笑顔も、涙も、あのクソガキ達もひっくるめて、俺が守る!だから、」 いったん切られた言葉に、胸の鼓動が高鳴った。 「、俺の本当の家族になってくれ」 言葉と共に、正面を向かされて視線がかち合った。 返事を、しよう。返事なんて決まってる。ずっと昔から私は恋次の事……。 そう言おうと思って口を開いた時。 「返事は、また明日聞きに来る!」 「へ?」 「一晩、ゆっくり考えろよ」 恋次はそう言って出て行った。 「いい逃げ……??」 まったく、恋次らしい。 せっかちなんだから。こっちの言葉も聞かないで。 でも、嬉しかった。その気遣いが。 「明日、なんて言おうかな」 幸せな一晩をゆっくり考えて。恋次と共に生きていこう。 ずっと、ずっと。 笑顔のときも、涙のときも。 朝も、夜も、恋次を愛し抜く事を……ここに誓います。 |
恋次幼馴染み、プロポーズ夢ですv 前回の恋次夢が暗い感じだったので、今回はひたすら明るく幸せな夢を描きたいなぁと思って出来上がったものです。 読んで下さった方、ありがとうございます☆ この作品は> 碧露草様の夢小説投稿作品です。 碧露草様、ご投稿有難う御座いました。 photo/Sky Ruins |