世界っていうのは無責任なものだ。戦争をしている国と国を気にかける他国はない。まずは自分の国が安定することが最優先だ。 それは、小さな「学校」という世界でも然り。クラスメイトがどうなろうと、まず考えるのは自分のこと。成績が良くて、部活を一生懸命頑張って、人間関係は 円満で――自分が安定することが最優先だ。
そうでしょう? 自分の幸せのほうが、他人の幸せより大切なのでしょう?
他の誰かが、それを非難しようと、私だけはその考えを貫き続け、生きた。

彼と、出会うまでは。

外は随分寒くなってきて、はらはらと淡雪が降っている。
そんな外の景色を眺めながら、私は一人、暗い部屋に居た。
この部屋だけが、私の世界だ。この世界は私を裏切らない。無責任でもない。とても、居心地が良い。

ピンポーン

家のチャイムが鳴る。本当は、この世界から出たくないのだけど、仕方がない。
立ち上がり、ドアへと向かう。
「はい、どちらさまで……」
次に続く言葉が、喉の奥で飲み込まれる。だって、そこに居たのは――
「や、やあ!」
ダメツナ……いや、ツナ。

「なんで……あんたが」
何故、ツナがここに居るのだろう。
そりゃあ、学校にちゃんと通っている時は、
恭子やハナと一緒に話したけれど……でも、何故?
「えっと……先生に頼まれて、プリント持ってきたんだけど」
「はぁ、そりゃ、ご苦労様」
なるほど。嫌われ者のところに行くのを、みんなが拒んだんだ。
きっと、恭子も、ハナも。
それで、断れない性格のツナに……か。
「じゃあ、えっと……はい!」
「ありがと」
「…………」
「…………」
永遠にも取れる、長い空白。まぁ、ツナと二人で話すことなんてないしね。

「えっと……」
ツナが言いづらそうに切り出す。
「……何?」
「その、は、いつごろ学校に来るんだ?」
「……行かないよ」
「な、なんで!? 恭子ちゃんも、黒川も……みんな待っているのに」
「みんなが……待っている?」
「そうだよ、みんなだよ!!」
「……嘘」
「嘘じゃないよ」
嘘だ、嘘だ、嘘だ――――ッ!!
「みんなが、私を待つ訳ないじゃない。私、嫌われているのよ?」
「……」
すぅっと、ツナは息を吸い、言った。
「確かに、嫌われているね」
ああ、やっぱり? と私は笑ってみせる。
……きっと、上手く笑えていなかっただろうけど。
「嫌っている人も、いる……。だけど、さっきも言ったけど、
恭子ちゃんも、黒川も、のこと、待っている」
「……待っているって言っても、その二人だけじゃん」
「違うよ」


「獄寺くんも、山本も待っている。それに……
オレも、待っている」

「っ……」
「あ、ごめん!! いきなりこんなこと言って!! 本当、ごめん!!」
「その……ツナは、本当に待っていてくれるの?」
「あ……うん、それは本当」
「本当に?」
「本当に」
「本当の本当に?」
「本当の本当に」

驚いた。ただの、これだけのやりとりで、私がひとを信じてしまうなんて。
そのツナの瞳には、しっかりとした意志がある。
教師の目とは全然違う、正直な、目。
ツナが、本当に待っていてくれている。なんて嬉しいんだろう!!

「だからさ……えっと、学校、来てよ。
明日来いなんて言わないけど……来てよ?」
「……気が向いたら、ね」
「いつでもいいから」
「……ん」
「それじゃあ……そろそろ帰るね」
「うん、バイバイ」
「バイバイ」
明日、学校に行ってみようかな。

そうしたら 君が笑ってくれそうだから
いま 気付いたの
君の笑顔が 私に元気をくれるって

ありがとう。無責任な世界で、君みたいなひとに出会えたことが、
とても嬉しいです。ありがとう……ありがとう、ツナ。









君と出会えたことに、心から感謝する







長い……新年早々、何長いもん書いとんじゃあーーー!!
……と自分を叱ってみました(笑)
でも、本当に長いですよね!? 目が疲れた方すみません!! そしてツナがツナじゃなくてごめんなさい!!!

読んでくださり、ありがとうございました。

この作品は蒼空の雫様の夢小説投稿作品です。
蒼空の雫様、ご投稿有難う御座いました。

photo/Sky Ruins