会いたい……キミに会いたい









 会いたいと。

 そう思う心を押しとどめるのは、簡単な事じゃないけど。

 でも、キミの事を考えれば、想いをそのままぶつける事はただの我が侭なんだと思うから。


 言えないよ。

 キミが好きだから、言えないよ。



「よお、。なんか久しぶりだな」

「一護……久しぶり!」


 偶然だった。

 会いに行ったわけじゃないんだ。ただ、お母さんに言われて一護のお父さんに届け物を持ってきただけ。
 そもそも一護は最近家に居なかった。
 居るのは一護の顔をした『知らない誰か』で。

 今日だって、きっとその一護の振りをした『誰か』が居るもんだとばっかり思ってたから。


 びっくりさせないでよ、もう。



「上がってくだろ?」
「ああ、うん」

 久しぶりに上がる、一護の家。
 久しぶりに見る、一護の顔。


 やっぱり、全然違うなぁ。
 だって、『一護もどき』は顔に締まりがないんだもん。私の顔を見て目を輝かせて、
飛びかかって来ようとする一護なんか、一護じゃないし。


「悪いな、最近。いろいろ……立て込んでて」
「うん、忙しいんでしょ?」
「まあ……、な」


 分かってるよ。

 いつも一護が何か言いたそうな顔をしてること。
 私なんかじゃ手の届かない、遠い所に大切な事をしに行ってるんだって事。

 私に、言えない事があるんだって事。
 だから。

「大丈夫だよ、一護」

 眉を寄せて、視線をそらしていた一護が顔を上げる。

「私、大丈夫だよ。一護の事信じてるし、ちゃんと待ってるから」
……」


 会いたいとか。
 寂しいとか。
 不安だとか。

 私はちゃんと乗り越える事、出来るから。

 一護が好き。それに勝る気持ちなんて、無いよ。

「待ってるよ、ずっと。全部終わるまで」


 私、一護の彼女だもん。  


「ああ。すぐに、片付けるからよ。もう少しだけ、待っててくれよ……な」
何かを決意するように私の目をじっと見つめてから、一護は私を抱きしめた。
「全部終わったら、全部片付いたら。真っ先にんとこに会いに行く」
「うん」
「俺、お前んとこに帰るから……」
「うん、うん!」


 ねえ、一護。


 言えないけど。

 言えないけどね。

 本当は、会いたくて会いたくて仕方なかった。
 毎日思ってた。いつも思ってた。

 会いたい。会いたい。今すぐ、会いたい。そればっかり思ってたよ。


 言えないけど。

 言えないけど、一護は分かってるよね。気づいてるよね、きっと。
 だからこうして、抱きしめてくれるんだよね。


「一護。いつも、思ってるから。一護の事、いつも思ってるから」
「ああ」
「次に会えるの、楽しみにしてる。……待ってるね!」

 自分から離れて立ち上がったのは、一護から背中を向けられてしまうのはちょっと悲しいと思ったから。

 一護が私の体を離して、立ち上がってしまったら泣いてしまいそうだったから。


 泣かないよ、寂しいけど。

 今は、泣かないよ。

「じゃあね、一護。行ってらっしゃい」

「ああ、行って来る」


 一護の言葉と真直ぐな目を確認してから、笑って背中を向けた。


 行ってらっしゃい、一護。



 ねえ、一護。

 泣くのは、あなたが本当に帰ってきてからにするね。

 そのときは、ちゃんと言うから。

 寂しかったよって。
 ずっと、会いたかったよって。


 だから、ちゃんと帰ってきてね。


 待ってるから。









〜あとがき〜

長い!……かも??
何となく浮かんだ話です。
時期的には、靜霊艇から帰ってきてまたいろいろ忙しくなって、って感じの頃です。
アバウトですみません;

呼んで下さった方がいらっしゃいましたら、ここで御礼を。
ありがとうございました!!

この作品は碧露草様の夢小説投稿作品です。
碧露草様、ご投稿有難う御座いました。

photo/M+J