ティキは、思っていたよりもずっと寂しがりやだった。

「帰るなよ……」

布団から伸びて来た腕に掴まれて、その冷たさを再確認する。





「寒いの?」

「寒くないよ」

そんなやり取りを、出会ってから今まで何度して来ただろう。

 それほどに、ティキの掌は冷たい。



「何でだろーな。心も冷たいからか?」

そう言うティキの声は、いつもどこか寂しそうで。



 ティキがそう言うたびに私は彼を抱きしめて、必ずこう言う。

「違うよ、ティキ。心が温かいと手は冷たいんだって」

「何でだよ。おかしくねー?」

「おかしくないよ。おばあちゃんがそう言ってたもん」



 今までも、何度も繰り返されたその会話。

 使い古された映画の台本みたいに、何度も重ねられる台詞が少し心地いい。



「なー、

ティキは、私の腕の中から顔をのぞかせた。

「俺さ、にそう言って欲しくて触れるのかもな」

何だか子供みたいに、どんな反応が返って来るのか少しだけ怯えてる顔。

「それなら、何度でも言ってあげる。ティキの心は、温かいよって」





 本当だよ、ティキ。

 本当にそう思ってる。





 あなたが普通とは少し違うってこと、初めて会った時から何となく感じてた。

 漂うオーラで、分かってたよ。



「白い俺も黒いオレも、どっちも本当なんだ。ずっとこうして生きて来た」

いつかティキは、そう言って悲しげな顔をしたよね。



「俺が、怖いか?」

そうやって私を試す振りをして、心の震えを誤摩化していた事、知ってたよ。





 だから、白いティキも黒いティキも愛したいって思った。

 そして今は、両方愛しているよ。





「俺、いつかお前の事殺したくなる時が来るのかも知れない」

黒いティキは、いつかそう言って震えていたよね。

 自分の掌を見つめながら、一粒だけ涙をこぼしたティキ。

「大丈夫。ティキの全部受け止めるから」

私は、何があっても逃げたりしない。あなたと一緒に戦ってみせるよ。





 だって、もしも私を殺す時が来たら、あなたは私よりも苦しい筈だから。





「俺、の為に何が出来っかな。なーんも持ってねェしなぁ」

白いティキは、いつかそう言って笑ってくれたよね。

 あれこれ頭の中で考えて百面相して。一生懸命だったティキ。

「そう思った時は抱きしめて。それで、それだけで私は幸せだから」



 そう言ってから、時々訳も無く私を抱きしめてくれるよね。  私はそれが、溜まらなく嬉しいんだよ。







 布団の隙間から見える、黒い腕。



 その腕は、私の手首を掴んで放そうとしない。



「泊まってけよ。たまにはいいじゃん」

まるで体中全部が『寂しい』って言ってるみたいに、ティキは訴える。





「分かった」

私がそう言ってベッドの端に腰掛けると、ティキは起き上がって私を抱きしめた。

「俺、が必要なんだわ、やっぱ」

「何?急に」

「ん?いや……ただ、」

ティキはいったん言葉を切った。



「ただ、愛おしいってこーゆう事かって。今分かった気がして……さ」



 照れくさそうな、声。

 黒いティキにしては珍しい、甘い言葉。



 何よりも嬉しい、甘い甘い言葉。





「うん。私はティキの傍に居るよ。いつも、ずっと……」

私が言うと、ティキは私の腰に手を回したままベッドに倒れ込んだ。

「なんか、を抱きしめたら眠くなったわ」

ティキは安心した子供みたいに、瞼を閉じようとした。



 だから私はその瞼に、キスを。

「愛してるよ、ティキ。おやすみ」









寂しがりなあなたに、
   おやすみのキスを。










〜あとがき〜

ティキ・ミック卿。大好きですv
格好良くて繊細でちょっと怖い所が好きです♪

ちゃんと、ティキになっていたでしょうか???

不安です。。。


この作品は碧露草様の夢小説投稿作品です。
碧露草様、ご投稿有難う御座いました。

photo/乙女失格