涙のMerry Go Round
私はただ、あなたの事が好きだっただけ。
ただ、それだけだったんだよ。
何度も通った小さな遊園地。
家が近いからって理由で、『ガラじゃないから』って渋るディーノを何度も連れ出した。
イタリアって街は、至る所に移動式の小さな遊園地があるから。
夜のネオンの真ん中のメリーゴーラウンドも、何回も見に行ったよね。
「、乗るか?」
って聞かれたけど、子供用のメリーゴーラウンドはやっぱりちょっと恥ずかしくて。
2人で手を繋ぎながら、そのキラキラ輝くメリーゴーラウンドをいつまでも2人で眺めていた。
そんな時間が、私にとって唯一の安らぎだった。
ディーノはいつも忙しいからなかなか会えなくて、
私が借りているアパートに来てくれるのをずっと待っていた。
「ここの窓からも見えるんだな」
って、2人で手を繋いでみたメリーゴーラウンド。
ねぇ、ディーノはもう忘れちゃったかな?
「何が気に入らねぇんだよ」
って、ディーノは言ったけど。
「待ってる時の時間の長さなんて、ディーノには分からないんでしょ!?」
ずっとずっと、待っていたから。
時計の針が何度も何度もぐるぐる回るのを、
メリーゴーラウンドみたいだと思いながら、ずっと待っていた。
好きだから、会いたくて。
好きだから、我慢して。
好きだから、待っていた。
そしてどんどん、辛くなっていった。
「もう、終わりにしよう」
私の言葉はね、半分本気で半分はディーノを試していたんだよ。
「勝手にしろよ!」
仕事終わりで疲れていたディーノの、イライラしたような言葉。
私に会う為に、頑張って仕事を終わらせてきてくれてた事も。
今なら分かるけど。
でも。
「さよなら」
私じゃもう、ダメなんだと思った。
ディーノの愛を試そうとするような私じゃ、あなたはもう安らげないでしょう?
だから、ディーノに背を向けた。
涙を堪えながら歩いていても、本当はどっかで追いかけてきてくれる事期待してたの。
バカだよね。
家までの道のり、昨日まで輝いていたネオンが滲んで見えた。
移動式遊園地の軽快な音楽も、あのメリーゴーラウンドも。
全部が、滲んでいる。
これから私は、あなたのいない時間を数えて行くのかな。
また何度もぐるぐる回るメリーゴーラウンドみたいな時計を見つめるのかな。
そう思って、自分の部屋の鍵を開けたとき。
「おかえり」
ちょっと怒ったみたいな顔をした、ディーノが居た。
「なんで……?」
驚く私をよそに、ディーノは窓辺に立って私を手招きした。
恐る恐る、そこに近づくと……。
ディーノはそっと私の肩を抱いた。
「俺さ、ならずっと待っててくれるって。全部何も言わなくても分かってくれるって、
そう思ってた。がいつも笑ってくれてたから」
窓の外には、さっき見た涙で滲んだメリーゴーラウンド。
「だから、がそんなに苦しんでるのに気づかなかった。……ごめん」
肩を抱く手に、ぐっと力がこもって……。
「でも、を失いたくない。俺、お前が必要なんだよ。
だから……俺、またを泣かせるかも知れないし、同じようなケンカ何回もするかも知れあの
メリーゴーラウンドみたいに、同じとこ何回もぐるぐる回るかも……」
「うん、うん……」
「でも、俺もっと仕事できる男になるから。なるべくここに居られるように。だから……」
ただ、嬉しくて。
やっぱり、好きで。
ディーノの言葉を最後まで聞かずに、抱きついた。
「もう、会えないのかと思った。ごめんね、ごめんね……!」
ディーノは優しく私の体を包み込んでくれて。それから……
強引に私の腕を引いてアパートの階段を下りる。
「ディーノ!?」
まだ涙が止まらない私を、半ば抱えるようにして……たどり着いたのは、
あの小さなメリーゴーラウンドだった。
「乗ろうぜ!仲直り記念ってことで」
有無を言わさず、メリーゴーラウンドは私とディーノだけを乗せて動き出した。
「ね、ディーノ!やっぱり恥ずかしいって!」
道行く人達が、珍しい物を見るような目で私たちを見る。
からかうように口笛を吹いて行く人達だっている。
「いーじゃん!楽しいだろ?」
まるで互いを追いかけるようにしながら、メリーゴーラウンドは回る。
それは、今の私たちによく似ているような気がした。
恥ずかしくて、でもなんかくすぐったくて……。
こんなに長く感じた3分間は生まれて初めてだった。
「楽しかっただろ?」
「んー。でもやっぱり恥ずかしいよ」
さっきまで滲んでたメリーゴーラウンドは、今は見違えるくらいにキラキラしていて。
それを背中に、私たちは手を繋いで歩き出した。
「ねぇ、ディーノ」
「ん?」
「時計屋さんに行きたいんだけど」
「いいけど、時計が欲しいのか?」
さっき、メリーゴーラウンドに乗りながら、決めたんだ。
「うん。デジタルの時計を買うの」
「なんで?の部屋の時計、かっこいいじゃん」
「ううん。時計のメリーゴーラウンドはもうこりごりだよ」
「???」
私たちはずっと回っていてもいいけれど、時計の針を追うのはやっぱり辛いから。
だから、私も進歩しようと思って。
「仲直り記念に、買ってね!」
「はぁ〜?……ったく。じゃあ、店で一番かっこいいヤツ買ってやるよ!」
ディーノに買ってもらったデジタル時計で、ディーノを待つ。
まずは、そこから初めてみようと思うよ。
〜〜〜〜〜〜あとがき〜〜〜〜〜〜
何も考えずに書き続けていたらBLEACHの市丸夢ばかりになってしまいそうだったので、
今回はリボーンに挑戦です。イタリアやフランスの、
街の中にポツンとあるメリーゴーラウンドが好きなので、それを題材にしてみました♪
しかしあのメリーゴーラウンドに人が乗ってるのは
見た事が無いな……なんて思いつつも、書いてしまいました。
読んでいただいて、ありがとうございました!
微妙に自信の無い作品なのですが、伝わるものがあればいいなと思います。
この作品は「碧露草」様の夢小説投稿作品です。
「碧露草」様、ご投稿有難う御座いました。