1人の少女がアタシを見上げる

その少女に恐怖すら覚える

『アタシ』の記憶は、劣等感の塊だ









道化師の失敗 04









あれからもう1週間経った。

あたしは未だに病院で寝起きしている。度々、警察の人が事情を聞きに来る。大分落ち着いたけどまた

話が出来るような状態じゃない。



3Zの皆も、お見舞いに来てくれた。

トシや総悟は静かに見守ってくれる。

お妙ちゃんと神楽ちゃんは面白い話で笑わせてくれる。

新八くんは、唯一?の常識人なだけあって、冷静に対応してくれる。

近藤さんは、あたしのお見舞いに来たのかお妙ちゃんをストーキングして来たのか

よく分からないが、とにかく心配してくれる。

桂くんは、近藤さん以上によく分からない生物、「エリザベス」と一緒に来てくれた。


正直、エリザベスを見たときちょっと引いたけど、でもすごく嬉しかった。





「最近、みんな忙しいのかなァ…そういえば今週からテストだって言ってたっけ…」


ピリッとした心地よい風が開け放した窓から入ってくる。

清々しいなんて、久しぶりに思った。


「よーう、チャン。見舞いに来たぜ」

「先生!久しぶりー…って、学校は?」

「俺はもう授業ねーから。それより、沖田とかに変なことされてねーか?

病院のベッドってお前…男のロマンじゃねーか」

「は?何かよく分かりませんけど、何もされてないです。

むしろ先生が何かしてきそうです」

「おいおい、ちょっと待ってくれよ。仮にも教師だぜ俺は。

んなコトしねーって。 お、このベッド気持ち良さそうだな。

ちょっとお邪魔しま「ぶん殴りますよ」

「…ジョーダンだって」

「今週からテストなんですよね?皆頑張ってんのかなー」

そそくさとベッドの側の椅子に腰掛けながら先生は

「おーまぁな。アイツらのことだから頑張ってはねーけど」

「あーやっぱり」

あたしと先生は顔を見合わせてククッと笑った。









「…んじゃあ、俺そろそろ帰るわ。実を言うと授業中抜け出して来ちまったからよ」

「えー!?ウソつきー!…でも、アリガト先生」

先生は部屋を出ながら手をヒラヒラと振る。

あたしも、姿が見えなくなるまで手を振り返した。


と、すぐに



コンコン・・



「あ、どーぞ」

先生、忘れものでもしたかな?

「こんにちは、ちゃん。またお邪魔させてもらうよ」

「あぁ、佐久間さん…何か進展が?」

「いや、残念ながら」

「そうですか」

「……前から思っていたんだが、君は年の割りに落ち着いているな」

「フ…よく言われます。そういう性格なんでしょう、アタシは」

佐久間さんは、少し目を細めた。

「ワリィ!忘れ物した……っと、お取り込み中スミマセンね」

突然銀八先生が部屋に飛び込んできた。

佐久間さんは顔をしかめて先生を凝視している。

「先生、何か?」

「あぁ…えーっとジャンプがそこにあると思うんだけどよ」

「コレですね…気をつけてくださいよ先生。アタシは……っ!

あたしは病人なんですー!ホンット騒々しいんだからー」

「お、おぉ…サンキュ。今度から気をつけるわ」

と言って出ていった。

「やっぱり、先生の前ではホッとしちゃうのかな?」

「え…何がですか」

「いやいや、少しね…。態度が違うと思ったから。

今日はちょっと様子を見に来ただけだ。私はこれで帰るよ」

「あ、はい。お気をつけて」









再び1人きりになった。今まで明るかった部屋は

薄暗くなっている。太陽が沈む。

永遠に隠れようとしているかのように。







目を瞑ってみると、瞼の奥に突然闇が広がった。

途端にある記憶がフラッシュバックする。





冷たい瞳でアタシを見上げる少女に

アタシを叩く女の人。それを無表情に見ている男の人。



大人も子供もアタシを指さす。

嘲笑う。 怒鳴りつける。

























みんな『アタシ』を否定する。









少しずつ彼女の過去に触れていきます。

一体彼女の身に何が起きたんでしょうか。


この作品は天狼様の夢小説投稿作品です。
天狼様、ご投稿有難う御座いました。

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