「あ」 見上げた先には 夜空を彩る、たくさんの星。 AH! VOUS DIRAI-JE,MAMAN 君と歩く夜道。 漆黒の黒を埋め尽くしてしまいそうな、輝く宝石が 空に、こんなにもいっぱい。 「見て一護っ!! こんなにたっくさんの星!! 綺麗だねー」 「あ? ああ。そうだな」 「ツレないねぇ、ほんっとに。感動ってものがないの?」 俺の隣で、が目をきらきら光らせている。 俺とは、中学からの付き合いで。 今は……恋人だったりする。 恋人…かぁ。 なかなか実感ねぇな。 付き合う前と変わらねぇノリで、今までやってきたからな…。 「一護っ!! ねぇー聞いている? ドコゾの世界へトリップしてない?」 きらきら光るその瞳で。 きらきら光るその笑顔で。 俺はどれだけ癒されるだろう。 「してねぇよ」 「じゃあ話し聞いていた?」 「…………聞いてなかった」 「やっぱりトリップしていたんじゃん。 まぁ、いつもそうだよね、苺ちゃんは」 「誰が苺だとォ!!??」 「はいはーい。すぐ喧嘩腰になるの、一護の悪い癖だよぉ? それより……人の話は黙って聞きなさい!!」 「ぐおっ!?」 鳩尾に鉄拳を一発くらって、俺は少し大人しくなる。 「『きらきら星』って曲、知っているでしょ?」 「そりゃぁ、幼稚園のころに歌っただろ」 今、俺たちの頭上に広がっている世界が、 『きらきら星』の情景に似ている、とでもは言うのだろうか。 ……似合わねぇ。 「ん、そだね。でも、違うんだなぁ、コレが」 「……何がだよ?」 「『きらきら星』なんだけど、違うの。 モーツァルトの『きらきら星変奏曲』っていう曲、知っている?」 「……ちょっと記憶にねぇな…」 「……よっし、じゃあ、思い出してよ?」 中学に入って、初めての夏。 あたしは、学校の音楽室でピアノを弾いていた。 先生が渡してくれた、一冊の楽譜とにらめっこしながら。 そんな時。 「何してんだオマエ?」 その人は、やってきた。 「ピアノ弾いているの」 「へぇー。オマエ、ピアノ弾けたんだな。 ……随分難しそうな曲弾いていたけど、なんて言う曲だ?」 その人は、私の隣に椅子を引いてきて座った。 その時に、思ったより顔が近くに来てびっくりしたの、覚えている。 「『きらきら星変奏曲』っていうの」 「『きらきら星』? 俺の知っている『きらきら星』と違うのか?」 「うーん……これは、有名な音楽家が、元々の『きらきら星』を 12のパターンにアレンジした曲みたい」 「ふーん。随分上手く弾けていたな、オマエ」 「そうでもないよ?」 「そうだって。俺、こんなの一生かかっても弾けねーもん。 オマエ、すげーよ」 初めて、こんなに褒められたと思う。 あたしは、とくん、と胸が鳴った。 もう少し、この人と一緒に居たいな……そう思った。 でも、外でね。 その人を呼ぶ声がしたの。 ああ、もうこの人とお喋りできないんだな、と思うと、 ちょっと切なくなった。 その人は、外で呼ぶ声に「おぅ」って応えてから、 あたしのほうを向いて、こう言ったんだ。 「その曲、全部弾けるようになったら聞かせてくれよな。 じゃあな、」 この日、初めて喋った男の子が、初めてあたしを呼び捨てて呼んだ。 そのことが嬉しくって、あたしも 「じゃあね、黒崎くん!!」 って返したんだ。 「…………」 「思い出しましたか? 黒崎くん♪」 「……今更そんな話しするなってぇの」 照れるじゃねぇか、この野郎。きっと俺、今、顔真っ赤だ。 「でもさー、あの時、一護が話しかけてくれなかったら、 あたし、きっと一護のこと好きにならなかったと思うよ?」 「……そうか?」 「だって、一護、いつも睨んでいるような目だし、髪はオレンジだし。 ちょっとビビッていたんだからね、あたし」 「うるせーよ」 「でも、あの日、ほんとは優しい人なんだな、って知ったから…… 今もこうして好きなんだけどねっ」 「ちょっ!! おまっ!! だっ、抱きつくなっ!! オイ!!」 が、ぎゅっと俺に抱きついてくる。 今、こうしていられる時間が、俺にとっては、何より幸せだ。 ……なんて、には言えねぇけどな。 「ホラ! 帰るぞ!!」 「ぶっ…顔真っ赤だよ、苺」 「苺じゃねぇーーー!!」 幸せな時間をくれた『きらきら星変奏曲』に、あたしは感謝しています。 君と歩く夜道。 漆黒の黒を埋め尽くしてしまいそうな、輝く宝石が 空に、こんなにもいっぱい。 それは、幸せをくれたあの日を、思い出させてくれるものだった。 |
だろうから)長いんですよねぇ……。目が痛くなった方もいらっしゃると思いますが、 ここまで読んでくださり、ありがとうございます。 この作品は蒼空の雫様の夢小説投稿作品です。 蒼空の雫様、ご投稿有難う御座いました。 photo/柚莉湖♪風と樹と空と♪ |