ラブストーリーが待っている 「隼人!」 大好きなその背中を見つけたとたんに、我慢できなくなって飛びついた。 「なっ……!お前、!?」 ほら、驚いた。 その顔が、見たかったんだよ。 隼人がこの国に来てから、2ヶ月と13日。 『俺、日本に残って10代目の右腕になる』 電話でそう言われて、更に1ヶ月と4日。 もう、限界だった。これ以上、我慢なんかできなかった。会いたかった。 自家用ジェットで送ると言うお父様の親心を諭し、最低限必要なものだけを バッグに詰め込んで、飛行機でじっとしている事13時間。 漸く、隼人の背中を見つける事が出来た! 「隼人、会いたかった!!」 抱きついてご挨拶のキスをすると、隣にいたヒョロヒョロの男の子が顔を真っ赤にして声を上げた。 「ごっ、獄寺くん、この子は一体!?」 彼は、顔の半分を掌で隠して、指の間からこちらを伺っている。隼人と同じ 洋服を着ている所を見ると、同じ学校に通っているお友達かな? ところが隼人は、背中をしゃきっと伸ばして彼をこう呼んだ。 「あ、10代目」 10代目?? 「あの、こいつは……」 このヒョロヒョロの男の子が、10代目??自分の目と耳を疑ったけど、 隼人の言葉を疑うなんて事は絶対に有り得ない。 だから、ニッコリと笑って私もご挨拶を。 「初めまして、ボンゴレ10代目。私、イタリアから参りました隼人のフィアンセ のと申します!以後、お見知りおきを」 スカートの裾を軽くつまんで腰を少し落とすと、10代目はポカンと惚けている。 そして隼人は慌てたように取り乱して、私の腕を掴んだ。 「す、すみません10代目!!後日説明しますので今日はこの辺で!」 私は隼人に引きずられるままに近所の公園にやってきた。 「、お前なぁ……」 私が会いに来たと言うのに、隼人は少し不機嫌な様子。私はちゃんと挨拶もしたし、 10代目にだってちゃんと自己紹介も出来たはず。なのに、何が気に入らないと言うのだろう? 私が首を傾げていると、隼人は軽く溜め息をついて不機嫌な理由を話してくれた。 「あのなぁ、日本では人前でキスをしたり、この年でフィアンセがいるなんて事 普通じゃねえんだよ。10代目も驚かれてただろうが」 隼人は、近くにあったベンチに腰をおろした。 「何故?私、ちゃんとご挨拶できたでしょう?」 「だから、そーゆう問題じゃねぇんだよ」 隼人が、また溜め息をついた。 イタリアから13時間もかけて会いに来た。 隼人を驚かせたくて、喜んで欲しくて連絡もせずに押し掛けてしまったけれど、 それは隼人にとって嬉しい事じゃなかったみたいだ。 考え無しに飛んで来てしまった事で、隼人を怒らせた。 それが、ショックだった。 自分の馬鹿さ加減に、今ここで漸く気がついた。 「あー、もう!そんな顔すんなよ!」 隼人が急に立ち上がって、そう言いながら私の頭を撫でる。 その顔は、さっきとは違ってとても優しいものだった。隼人はすごく優しいから、 落ち込んでいる私に気を使ってくれているんだと思う。 私は、隼人に気を使わせてしまっている事にまた落ち込んだ。 「ごめんなさい……」 俯いたまま、隼人の顔を見る事が出来ない。 「チッ、ったく……」 隼人のしたうちに、体がビクッと反応した。益々怒らせてしまったみたいだ。 そう思って、恐る恐る顔を上げると……。 そこには、ビックリするほど優しい目をした隼人がいた。 「は世間知らずなお嬢様だからな。ま、そーゆうとこがのいい所かも しれねぇし。……会いに来てくれた事は、その、ほら、」 途中から言葉に詰まった隼人を、首を傾げながら見上げた。 何故か顔が赤くなっているように見えたし、首のあたりを書きながら視線を さまよわせているのが不思議だったから。 なのに。 「あー!お前、その顔やめろよ!」 隼人は急にわめいたかと思ったら、いきなり私の体を抱きしめた。 「隼人……?」 訳が分からずに名前を呼んでみる。耳に聞こえる隼人の鼓動は、いつになく大きくて早い。 どうしたのだろうと思っていると、次に聞こえた言葉は涙が出るほどに嬉しい言葉だった。 「会いたかったよ。……俺も、に会いたかった」 紛れも無く、隼人の声だった。 「隼人、今なんて言ったの?」 隼人はいつもどっちかと言うとクールで……。優しいけど、あまり気持ちを素直に 伝えてくれる方ではなかった。こんな言葉をもらった事なんか、今まで無かった。 だから、今の言葉を確かめたくて。そう尋ねながら顔を上げようとした時。 「バカ!顔上げるんじゃねえよ!」 そう言われて、顔を隼人の胸に押し付けられた。 一瞬だけ見えた隼人の顔は、ビックリするくらい真っ赤っかだった。 「隼人……」 今気がついた。隼人の鼓動が早い理由。だって、私の胸だって同じように大きく、早く、高鳴っている。 「何で俺がこんな事……!クソっ!」 悪態をつく隼人が、初めて可愛いと思えた。 「隼人、会いたかった。会いたかったよ」 今は素直に甘えてもいい気がして、隼人の背中に腕を回した。私、本当はずっと こうして抱きしめて欲しかった。 「……このまま、日本にいろよ。俺の傍に、いろよ」 頭の上から降ってきた甘い言葉に、酔いしれる。私を抱きしめる腕にグッと力がこもった。 「いいの?私がここに居たら、迷惑にならない?」 今度こそ顔を上げると、隼人の真直ぐな視線とぶつかった。 隼人は何も言わなかった。 その代わり、優しくて温かいキスをくれた。 「明日、10代目に改めて紹介する。俺の恋人でフィアンセだってな」 少しそっぽを向いたその顔が、やっぱり真っ赤で。でも優しくて。 こんなに幸せでいいのかな?って、そう思った。 「あ、でも親父さんにちゃんと許可とらねぇとな」 「それならもう、大丈夫!これ、お父様から預かってきたの」 出発直前に預かった手紙。ちゃんと隼人に手渡す。 「何?……娘の事は頼んだぞ……?はぁーーっ、金持ちのする事はわかんねーなぁ」 「あら、隼人の家だってお金持ちじゃない」 とりあえず、2人で笑って。 とりあえず、隼人が住んでいる家に2人で手を繋いで歩き始めた。 会えなかった時間を埋めるように、2人でいろんなことを話した。 これから毎日こんな日々が続くんだって思ったら、笑顔が止まらない。 ずっと、一緒。 だよね?隼人。 |
獄寺夢は、どうしても年上の大人ヒロイン方面に行きがちなんですよ、私。 だけど今回は意識して同じくらいの年の女の子をヒロインにしてみましたv 成功か?失敗か? それは……分かりません; この作品は碧露草様の夢小説投稿作品です。 碧露草様、ご投稿有難う御座いました。 photo/NOION |