待って、待って、待って!!

「石田くん!」



渡したいものが、あるの――



息が切れて、心臓もドキドキしている。

うーん……心臓のドキドキは、石田くんと話すから、だと思うけど。



さん……? 何の用?」

「あ、あのね……えっと、その……」

どうしよう。言葉が出ない。

やりたいことも、言いたいことも決まっているのに。

「何? 用がないなら帰るけど」

うぅ……いつにも増して、石田くんの言葉が冷たく聞こえる……。



「…………」

スッと、石田くんはあたしから離れようとする。

「あ、ま、待って!!」

「早くしてくれ。僕だって暇じゃない」

「じゃ、あたし、深呼吸十回するから、待って!!」

「……まったく」



落ち着け、落ち着け。大丈夫だから。

渡すだけじゃんか。だから、大丈夫だって!!



「……深呼吸、十回目だよ」

「う、うん……それで、えっとね、コレ!!」

「……お菓子?」

「てか、ケーキなんだけど。えっと……あたし、クッキング部でさ、

今日作ったんだよね。良かったら、石田くんに貰って欲しいな、って

思ったんだけど……」

「…………」

う、うわぁ。沈黙ですかっ!? えっと……石田くんなりの拒絶?



「ありがたく、貰っておくよ」

「そうだよね、いらないよね……って、いいの!? 貰ってくれるの!?」

「……折角作ってくれたんだしね」

「あ……あ、ありがとう……」

「……なんでさんがお礼を言うんだい?」

「あ……それもそうだね。でも、貰ってくれて嬉しい!」

良かったぁ〜。渡して良かったよ、うん!



「このケーキ、甘い?」

「うん? あー、甘いって言うより、甘酸っぱいって感じかな?

フルーツたくさん使ってあるから」

「ふぅん……」

「あ、フルーツ、嫌い?」

「いや、そんなことないけど」

「よかった…」



あなたを想った時の この胸のトキメキを

甘いお菓子に込めました



「――賞味期限は、あたしの気持ちが変わるまで」

「……え?」

「おいしく召し上がれ♪」

言いたかったことを全て言うと、あたしは

まるで逃げ去るかのように、走って部室に戻る。



「……言い逃げ……」









フルーツケーキ









またも雨竜夢です。……でもやっぱり口調がわからない……orz
ほのぼのに……なっていてくれているといいな……。

読んでくださり、ありがとうございました。


この作品は蒼空の雫様の夢小説投稿作品です。
蒼空の雫様、ご投稿有難う御座いました。

photo/ひまわりの小部屋