once again 壊れてしまった歯車を戻す事なんて、きっと不可能で。 それは自然の摂理に反する事だから、考えるべきじゃないんだ。私はずっとそう思っていた。 「本当に、終わっちゃったんだよね……私たち」 ディーノがこの部屋を出て行ってから、3か月経った。 もう、3ヶ月。 まだ、3ヶ月。 2人で並んでる、笑顔の写真。それは未だにベッドサイドの棚に飾ったまま。 あの日、あの時。 私は最愛の彼に言ってはいけない言葉を口にした。些細な行き違いから生じたケンカの末に、 ただカッとなって口から出てしまった言葉。 『もう、マフィアなんかと一緒に居たくない!私だって普通の幸せが欲しいの!!』 本心なんかじゃなかった。 売り言葉に買い言葉。でも、口から出てしまった言葉を取り消すなんて、出来なかった。 何より、取り消したとしても意味が無い事をよく知っていたから。 それを言ってしまった時のディーノの顔が、今でも頭から離れない。 噛み締めた唇が、とても痛そうだった。 『じゃあな、』 その背中を追いかける事すら出来なかった。 私の言葉がどれほどディーノを傷つけたのか、よく分かっているから。 ディーノはいつも、言っていた。 『ごめんな、。俺がこんな仕事してっから、お前には寂しい想いばっかさしてるよな』 『。俺さ、マフィアだからいろんな抗争とかあるんだわ。でも、何があってもの事だけは守るからな』 私はその言葉を、ディーノのこれまでの想いを全部否定したんだ。 全部、私が悪い。 なのに、私と来たら。 3か月経った今でもこの写真を処分できない。 今でも、朝目が覚めてディーノの気配がない事に、慣れる事が出来ない。 「何してんだろう、私……」 キッパリと忘れる事も、今更謝りに行く事も出来なかった。 どこまでも我が侭で、どこまでも弱虫な私。 重たい体を起こして、漸く服に袖を通した。その時。 ーーコンコン、ーー 玄関の扉をノックする音が聞こえた。時計を見れば、現在朝の8時半。 「朝から、誰よ」 のろのろと玄関に向かって、扉を開ける。 「ディーノ……」 そこにいたのは、ディーノだった。驚いて、驚きすぎて、名前を呼んだ後に言葉が続かなかった。 ディーノはその頬に僅かにだけ笑みを乗せて、私を押しのけて部屋に入った。 「起きっぱなしだった俺の荷物取りに来ただけだから、安心しろよ」 どこか冷たい、そんな言葉を口にしながら。 3ヶ月ぶりに会ったって言うのに、私たちは言葉を交わす事も出来ない。 私はただ、ディーノが淡々とバッグに荷物を詰め込むのを見ていた。 壁に背中を預けて、ディーノの後ろ姿に投げかける言葉を探しているのに…… 何も見つからない。 ディーの、少しやつれたな。疲れてるのかな?ちゃんと、寝てるかな? 今、どうしてるんだろう。仕事はうまくいってるのかな。 新しい彼女……できたのかな。 どれもこれも、口には出来なかった。返って来る言葉が、怖かった。 「」 名前を呼ぶ声に驚いて視線を向けると、ディーノが眉を寄せてこちらを見ていた。 「なんで?」 そう言うディーノの手には、あの写真立てが握られていた。 「それは……」 とっさに言葉が出て来ない。 私は、これ以上ディーノを傷つける事も、自分が傷つく事も、怖くて怖くて仕方が無い。 「」 どこか、咎めるような声だった。 「もう嫌だって言ったのは、お前だったよな?なのに……」 少し苛ついたような声に、体が震えた。 体中に心臓があるみたいに、心臓の音がやたらとうるさかった。それを沈めたくて、 辛くて、苦しくて、私はとうとう声を上げてしまった。 「好きだからっ!!今でもディーノが好きだから!」 「けど、お前……」 「だって今更謝りになんか行けないじゃない!自分の言葉がディーノをどれくらい 傷つけたのかなんて、よく分かってる!今更戻りたいなんて言わないから、安心してよ!!」 可愛くない、強がりで意地っ張りな私の言葉。 叫び。 ゆっくり、ディーノがこちらに歩み寄って来るのが分かった。 怖くて顔は上げられなかったけど、その足音と気配で分かった。 ピタリ。 私の目の前で、足音が止まる。 私の心臓は、さっきよりも増してうるさかった。 「バーカ」 一瞬、ディーノが何を言ってるのか理解が出来なかった。 「え?」 顔を上げると、視界が急に暗転する。 何?何?なに? パニックになっている私の耳元で、 「」 そんな風に優しく名前を呼ぶ声がして、漸く今の状況を理解する。 あぁ、私、抱きしめられてるんだ。 久々に感じるディーノの体温だ。そう思ったら、涙が込み上げてきた。 だって、きっとこれが最後だから。 そう思って身を委ねたのに。 「何で言わねーんだよ。ったく、馬鹿みてーな意地張りやがって。俺が3ヶ月、 どんな想いでを忘れようとしたか分かるか?」 その声は、想いも寄らないくらいに優しく、温かかった。 「俺さ、やっぱマフィアだし。しかもボスだし?が普通の幸せが欲しいって 思うのも、無理ねーと思う」 耳元に優しく響く、ディーノの声。 私は彼が何を言いたいのか、全然頭が回らなくて。ただ、黙って聞いていた。 「だから、これは俺の勝手な言い分で、俺の勝手な我が侭なんだけど……」 ディーノはそっと体を離して、私の顔を見た。 そしてその指で私の涙を拭って、真直ぐな視線を投げ掛ける。 「もう一度、やり直して欲しい。今度こそ、泣かせねーように守るから。 今度は絶対、幸せにするから!」 夢じゃないかと、思った。 見れんタラタラな私が見ている、夢なんじゃないかと。 でも、振れている手がとても温かくて。 「うん。私、ディーノじゃないとダメだって分かった」 本心を、そのまま素直に口にする事が出来た。 「俺も、じゃないとダメなんだ。3ヶ月間、体ん中が空っぽで何も考えらんなかった」 ディーノの細くてゴツゴツした指が、頬に触れる。その体温が、嬉しかった。 その手は頬を撫で、髪の毛を撫でて後頭部へと回った。 「今度は絶対離さねーから。も、覚悟しとけよ?」 そんな言葉の後。 ディーノは柔らかく微笑んで、少しだけ屈んで…… 「2人で、始めようぜ。もう一度……」 深く、深く、口づけた。 甘くて柔らかな、3ヶ月分のキスは。 「ディーノ、大好き」 もっともっと甘い世界へ私たちを運ぶ。 まるで太陽が西の空を赤く染めるように、私たちを愛色に染めていく。 もう一度、始めよう。 今度は2人で同じ目的地を目指しながら。 |
私的限界糖度のディーノ夢です; いつもの事ながら、彼は口調が掴みにくい!なので、『なんちゃってディーノ』 になっている可能性大です; スミマセン;; 出来るだけ甘いものが書きたくて出来上がったものです。読んで下さって、ありがとうございました♪ この作品は碧露草様の夢小説投稿作品です。 碧露草様、ご投稿有難う御座いました。 photo/M+J |