私が思うに、この世界は腐蝕している。個別だけじゃない、世界だ。世界すべて、 それというのは「わたしの世界」とかすっごく愛してる「市丸ギンの世界」だとかとにかくすべてで。 まあとにかく聞いてほしい。 わたしの世界、というのは年中無休で市丸ギンというにんげん(死神?)のことを 必死に考えていて、会えなかったら「ギンに会いたい」と願うし、特別な日には 特別なひとに祝ってほしいものだし、そりゃあもちろん食欲を満たすこともする だろうし、睡眠をする間までわたしをギンだけが占拠してるわけじゃないけど、 起きてる間はギンのことで頭はいっぱいである。 そうして、わたしのすっごく愛してる市丸ギンの世界、という話にいくけれど、 彼は実際なにを考えてるのかわからない。長年恋人として連れ添ったわたしでさ え、わからないくらい小宇宙並の頭の中。ひどく如何わしいことばかりかもしれ ないし、案外真面目に仕事のこととか考えてるのかも。とにもかくにも、彼がわ たしのことだけを年中無休で考えているかと聞かれればNOである。(こういう論 理を温度差というんじゃないかなあ) こうやって、惹かれあう恋人同士だとしても、こんなにも温度差が生じてしまう。 この温度差は相当腐蝕してる。そしてわたしたちの無駄に長い関係も、彼の嘘もなにもかも。 不意に目の前のギンに呼ばれて、顔を上げた。 「何考えてるんや?僕の話聞いとった?」 「ごめん、わたし今温度差の論理について寂しく考えてたよ」 「温度差?」 「簡単に言うとー、わたしがギンを思う気持ちを、ギンがわたしを思う気持ちって いうのは、なんか違う、ってこと」 最初は虚園に連れてこられて本当に吃驚した。破面のひとたちは本当怖いし、 慣れないし、まさか例の事件の首謀者が藍染隊長だなんて本当に本当に驚いた。 でも、それでもうれしかった。ギンがソサエティを裏切ったことや、死神を裏切った ことは寂しかったけど、それ以上にうれしかった。わたしをこんなところまで 連れてきてくれたこともわたしを信頼してくれていることも。 「僕はを愛してるっていつも言ってるやんか」 「そうゆうのはね、大事なときに言うもんなのー」 「だってな、愛しいって思ったときに言わへんかったらいつ言うん?」 「まあそれはそうだけど。」 「せやろ?」 「てことは、」 「僕がいつもを愛しい思ってることやんなあ」 ほら、こうやって口車に乗せられて、口が上手いギンに上手く言いくるめられて、 でも心のそこでは乗せられるのも言いくるめられるのも嬉しく思ってる。幸福 を感じる、食欲でも睡眠欲でも性欲でも満たされない、愛欲や幸福欲。 求めても求めてもギンがいくらでもくれるから、わたしはこれらがなくなって困 ったことなんて一度もない。 疲れたら、寝させてくれるから疲労困憊になったこともない。 呼べばきてくれるから、寂しい思いもあまりしない。 特別な日には、すてきなものもくれる、一緒にいてくれる。 ああ、なんでわたしはこんな幸せに気づかなかったんだろう! 温度差なんか皆無じゃあないか。考えるだけが愛じゃないんだ。 わたしが愛について、そして恋についてしばらく考えるけど、まず恋はひとりで しかできないじゃない(まあそれは恋焦がれあっているとしたら別ね、でもそれは 愛になれなかったふたつの恋) 愛っていうものはふたりじゃないと絶対出来ない(一方的な愛だとしても、受け止 める側もいるわけで。)愛というのはふたり、または不特定多数のにんげんたち。 家族愛、とか友情愛とかそういうのもあるわけで。 それを前に、ギンに言ったところ、「どうしたん急に?」っていつもみたいに笑って 言ったけれど、これはそんな簡単に急に考えた答えじゃないんだよ、ずっと ずっと知らなかった分からなかったにんげんの真理。ギンと一緒にいて、一生懸 命発覚した、わたしの心の出した必死の答えなわけであって、ひとりでは絶対出 なかったアンサー。 「わたしたち、もしかして…愛し合ってる?」 「長く一緒やから、少し麻痺してたんかもなあ」 「愛してる?わたしのこと。」 「さっき大事なときに言うたやん」 「ギンこそ、愛しいって思ったときに、って言ってたじゃない。だいすきだよギンのこと!」 「ああー僕もすきやなあ、もしかしなくても愛し合ってるやんか」 一歩一歩、わたしたち進んでいけばいい。間違ってたら遮って、笑いあって、 泣きあって生きていけばいい。今は悪くても良い、いつかは日の差す日々が待ってる。 日が沈んでばかりじゃ、わたしもギンもおかしくなって、この愛がいつか間違いだと思ってしまうかもしれない、 腐蝕した愛の ものがたり 腐った世界に生きる、大我なる腐蝕したふたり 死にながら生きている |
前書いた骸さんがめっさ暗かったので、甘いの書きたい!って思ったのです。 でも可愛い話じゃないですね、この話ヒロインがすきです。この性格が。 それでは、最初で最後だと思う市丸夢でした。 この作品は水嶋*唯様の夢小説投稿作品です。 水嶋*唯様、ご投稿有難う御座いました。 photo/乙女失格 |