道化師の失敗 01 鳥はいいな、と思う。 自由に空を羽ばたけて、自分の行きたい所へ行ける。 魚はいいな、と思う。 自由に水の中を泳げて、のどかに静かに生きられる。 人間は嫌だな、と思う。 不自由なこの世界で、それでも生きなければいけないから。 「ねぇ、ちょっと総悟。さっきから堂々と寝やがって鬱陶しいのよ。 ついでにそのアイマスクも鬱陶しい」 「……あ…あ?なんでぃか。ったくお前の面で起こされたら目覚めが悪くなっちまう…」 「悪かったわね!大体アンタ、そんなんで来週のテスト大丈夫なの!?」 「まぁ、よりは大丈夫でさァ。オレァこう見えても頭いいんで」 「!! あぁそーですか!そりゃ失礼致しましたー」 ったく、何だってコイツはこう…人を小馬鹿にするのが上手いわけ!? 口じゃぜってぇー敵わねぇー!ていうかコイツには何も敵わない! ホント、何気に頭いいし、普通にモテるし運動神経もいいし… あたしなんて赤点ギリギリの脳みそに、可もなく不可もなくの目立たないルックス、 運動神経も人並みという特に何もない女子高生。 えぇ、今までお付き合いしたことなんて御座いません。 「はぁー…もう何だかなー」 思わず溜息が出る。 「おい、シケた面してんな。こっちまで気分悪くなる」 「……何でお前等は何かっつーと『面』という言葉を出してくる…。 お前等モテるからって調子のってんの?」 「な、何だよ…。別にのってねーけど」 「ていうかね、教室でタバコなんか吸わないでよ。煙たいのよ全く。 大体未成年がタバコ吸っていいと思ってるわけ?バレたら停学よ停学! 何なら退学よ!瞳孔も開いてるし!」 「お前なんかあったのか?それと瞳孔は関係ねー。バレねぇーようにやってっから大丈夫だ」 「だから、何でアンタ達みたいな輩に限って頭良かったりするのかしら! あたしみたいな善良な高校生が馬鹿みたいじゃない!」 「……それより総悟見なかったか?」 「否定はしないのね…総悟ならアンタが来るちょっと前にどっか行ったわよ」 「そうか。あの野郎オレの携帯使ってやりたい放題やってやがるからな…じゃあ殺りに行ってくる」 「…気をつけて」 今の奴はトシ。特徴は開ききってる瞳孔にタバコ。あんな風体なのに風紀委員の副会長。だからタバコ吸うな。 総悟同様、モテるし頭いいし運動神経も抜群。 あぁ、雲の上の誰か、あなたを呪い殺しそうです。 「ー!弁当一緒に食べるアル!」 「あ、神楽ちゃん。うん食べよ!」 「あー!、その卵焼き美味そうアルな!頂戴アル!」 「いいよー!ていうか神楽ちゃんよく食べるね…さっきも弁当食べてたよね」 「育ち盛りだから、お腹空くアル!もたくさん食べるヨロシ」 「うん…神楽ちゃんがあたしの弁当をほぼ食べてるんだけどね…」 「あ、姐御!」 (無視!?) あー神楽ちゃんとお妙ちゃんて、何であんなに可愛いんだろ…羨ましいわチクショウ。 「こんのゴリラーーーーーーーーーーー!!!半径100m以内に近寄るなっつっただろぉぉぉぉ!!!!!!」 お妙ちゃん!無理!同じ教室内でそれは無理! 「姉上!落ち着いてください!ちょっと近藤さんもいい加減懲りたらどーなんですか!?」 「お妙さーーーーーーーん!!!俺は諦めーーーーーーーーん!!!」 「うっせぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!」 お妙ちゃんの怒号が飛んだ。 近藤さんも飛んだ。 うるさいけど、中々楽しい学校です。 |