キミを迎えに行くなんて 僕にはとても言えないから どうせ人間は皆一人なんだから、誰かと群れる必要はない。 どうせ一人だって寂しいと思った事はないんだから、2人になる必要はない。 そうだよ。 いつか、君が言った通り。 僕は、寂しい人間だ。 あの日、僕はただいつものように群れているムカつく奴らを噛み殺そうとしたんだ。 いつもと同じ。 ただ、一つだけ違う所があった。 それは、その中の一人が僕の攻撃を止められるほどの力を持ってたって事。 「女の子には手を上げちゃいけないって、習わなかった?」 しかも、女。 「キミ、ムカつくね。噛み殺していい?」 「やれるもんなら?」 との出会いは、最悪だったと。今でも思ってるさ。 どうしてとちょこちょこ会うようになったのか、僕には未だに分からない。 気づけばはいつも僕の横に立っていた。 「雲雀」 なんて、そんな風に僕の事偉そうに呼べる奴なんて、そうそう居ないんだけど。 は当たり前みたいな顔をして、僕をそう呼んだ。 いつしか、僕の隣にはが居る。 それが当たり前になっていたんだ。 「、さっきキミに馴れ馴れしく話しかけてた奴は誰?」 「、どこに行ってたの?」 「、」 …………。 この世の中にもしも本当に『恋の病』なんてモノがあるんだとしたら。 僕はそれにかかっていたのかも知れない。 不覚だよ、一生の不覚。 「群れてる奴らを見ると、噛み殺したくなる」 ある日僕がそう言うと、は少しだけ悲しそうな顔をした。 「雲雀、あんた本当に寂しい人だね」 「何言ってるの?」 僕にはさっぱり意味が分からなかった。 「私たちは、端から見れば群れてるってことになるんじゃないの?」 僕は、ハッとした。 そうだ。僕たちはいつも一緒にいた。 僕の隣にはが、の隣には僕がいた。 「馬鹿だね、雲雀」 はそう言ったけど、何故かその瞳が濡れているような気がした。 そして、僕のそのカンは当たっていたんだ。 「もう、会わない」 は短く、そう言った。 「どうして?」 僕は短く、そう訊いた。 「引っ越すの。遠くにね。だから、もう会わない。今日でサヨナラだよ」 の言葉が、僕の耳にはやけにゆっくりと聞こえたんだ。 「そう」 僕はただ、そう言う事しか出来なかった。 「じゃあね」 そう言って背中を向けるに、何も言う事は出来なかった。 でも、の背中が震えているように見えたから。 だから、思わず。 「住所と電話番号、僕の家に手紙で送ってよ」 思わず僕は、そう言っていた。 「え?」 は振り返って、怪訝な顔で僕を見た。 「聞こえなかった?言っとくけど、拒否権なんかにはないからね。 勝手に居なくなるキミが悪いんだ」 は、笑った。 その瞳に涙をいっぱい溜めて、泣いた。 「いい?これは僕の命令だからね」 僕に言える事なんて、こんな事くらいだった。 なのに、それでもは笑うんだ。 「うん、分かった」 なんて言いながら。全く、変な奴だよね。 それからは、今度こそ僕に背中を向けて帰って行った。 もう二度と会えないかも知れないなんて、嘘みたいにいつもと同じように。笑顔で。 大人になったら迎えに行くよ、なんて。 そんな事僕にはとても言えないから。 だから、とりあえず待ってみようと思ってる。 君からの、手紙を。 あとがき 雲雀夢、第二弾! 雲雀夢は、どうしても甘くならない……精一杯の糖度で、ほのぼのって感じです; 読んでいただいた方、本当にありがとうございましたv この作品は「碧露草」様の夢小説投稿作品です。 「碧露草」様、ご投稿有難う御座いました。 photo/ひまわりの小部屋 |