『嘘吐きは嫌い。嘘も吐けないあなたはもっと嫌い』 「なぁ、。ボクの事嫌いなん?」 「うん。大っ嫌い」 「なんで?」 「嘘吐きだから」 ギンとの会話。 それは、紛れも無く私の本心だよ。 嘘が嫌い。嘘つきが嫌い。だから、ギンが嫌い。 だけど、人間(死神)の感情なんて、そんな簡単なもんじゃなかった。 「せやったら、もう二度との前で嘘はつかんから」 「また、それも嘘でしょ?」 ギンは、うるさい。 仕事をさぼって、私の仕事先にやってきては邪魔をして帰って行く。 同期だから仲がいいのは仕方ないんだけど。 「もう!ギン、邪魔!うざい!!」 一日に一回は私はこうしてキレる。 「うわ。酷っ!傷つくわぁ」 「嘘吐き」 そりゃ、私だってね。好きでキレてるわけじゃないんだよ? だけど、わざわざ違う隊までやってきて 「〜。かまってや〜。なぁ、」 とか、 「ボク、隊長やんか。隊長命令や!かまって〜」 とか。 そんなヤツが隊長なんて、あり得ないでしょ?うっとおしい。 だけどある日、耳に届いたギンの噂。 「さん!聞きました?市丸隊長、三番隊の新しく入隊した女の子とキスして たんですって〜!私の同僚が目撃したんですよ。もう、私市丸隊長に憧れてたん でショックで……」 あぁ、どうりでここ何日か顔を出さないわけだ。 「ふーん」 なんて言いつつも、胸の辺りがムカムカするのは何でだろう。 何でだろう……。 「〜!久しぶり!寂しかったやろ?ボクが顔出さんと」 「別に」 ギンはいつものようにやってきて、いつもと変わらずに絡んでくる。 それが、無性に腹立って。 「なんや、今日はまた一段と冷たいな〜」 なんて言うギンを思いっきり睨んだ。 「なんやねん」 「こんなとこに来てていいの?三番隊の女の子が、待ってるんじゃない?」 ギンはちょっと首を傾げた。 「ん?何?それ」 「キス、したんでしょ?」 私の言葉に、ギンはあの笑顔を顔に乗せたまま固まった。 何も、言わない。 そんなギンが、余計に腹が立ってきて……。 「何か言えば?何黙ってるの?」 ギンは、ちょっとだけ困ったような顔をした。 「なんて言えば、信じてくれるん?」 そう言って、細い目で私を見つめるギン。 「信じるって、何を?私は別にあんたに彼女が出来ようと関係ないし」 私はそう言ったけど、本当は『そんな噂嘘だよ』って言って欲しかった。 たとえ、それが嘘だと分かっていても。 それでも、いつもみたいに嘘吐いてはぐらかして欲しかった。 そうしたら、私はどこかでそれを信じることができるから。 なのに。 「ん〜。確かに、キスはした。やけど、彼女やないよ」 「何それ。最低」 頭を、何かでガンと殴られたみたいな感覚。 「もういい。そんな話、聞きたくない」 これ以上聞いていたら、取り乱してしまいそうだった。そんな自分が、嫌だった。 「が言うたんやん。嘘吐きが嫌いって」 「は?」 ギンは、随分前に勝手に言ってた『もうに嘘は吐かん』って言葉を守っていた。 そんなの、別に約束でも何でもないのに。 でもさ、聞きたくない事もあるじゃん。 別に私はギンの彼女でも何でもないけど。 「せやから、に嘘は吐かへんよ」 そんなの…… 「確かに、嘘吐きなギンは嫌いだよ!だけど、嘘もつけないようなギンはもっと嫌い」 私、何が言いたいんだろう。自分でも分からない。 「こんな時に、嘘も吐けないようなギンは大嫌い」 矛盾しまくりなのは分かってる。 バカみたいに素直じゃなくて、ただあんたの事が好きだから聞きたくなかった って言えない自分が、本当は一番嫌い。 「キスはな、されたんよ。えらい積極的な子が居てな。急な事やったから避けら れんくて……でも、ちゃんとその子に伝えたわ。ボクには好きな女が居るって」 溜め息をつきながら、ギンは言った。 どこからどこまでが本当で、どこからどこまでが嘘か分からない。 でも、それがギン。 「あっそ」 それが全部嘘でも良かった。 私、どっか屈折してるな。なんて思いながらも。 「満足したか?」 そうやって笑うギンに背中を向けて、仕事を再開する。 「うるさいなぁ。邪魔だから、どっか行ってよ」 「酷っ!ショックやわ〜」 「嘘吐き」 いつもの、会話。それが嬉しい。 「嘘やないって」 いつもの会話に、プラスされた言葉。 「嘘は吐かへんって言ったやん。ほんまにショック受けてんよ?」 プラスされた言葉と…… 「……ちょ……っ!!」 プラスされた、キス。 「あー、これで癒されたわ」 にやり、と笑うギン。 「ギン!!」 「消毒やん、消毒!」 相変わらず、てんで素直になんかなれない私だけど。 ま、気長に待ってもらいましょ。 嘘吐きなギン。 嘘吐きが嫌いな私。 だけど、本当は……ギンに好きだと言えない私も、大概嘘吐きなんだよね。 そこんとこは、まだ……秘密。 〜〜〜〜〜〜〜あとがき〜〜〜〜〜〜〜〜 初めまして。こちらのサイトでは初投稿になります、碧露草と申します! 読んでいただけた方、最後までお付き合い下さってありがとうございました。 碧露草、市丸ギンが大好きです。というか、癖のあるキャラが書き易いと言うか ……。これからも市丸夢が多くなるかもしれませんが、よろしければまたお付き 合い下さいませ♪ この作品は「碧露草」様の夢小説投稿作品です。 「碧露草」様、ご投稿有難う御座いました。 photo/Sky Ruins |