はじめのいっぽ 4話
― 4 何故?―









 現世へ行くようにとの命令が出たのは、半刻ほど前のこと。



「何で私まで?」

床に伏していた期間の書類仕事を終えたと思ったら、そんな命令が下るから。

溜め息とともに思わず山本総隊長に行ってしまった。





「のぉ、。お前はかなり迷惑かけよったよな?ならば、その償いとして面倒

を押し付けられても仕方ないんじゃないか?一番隊の副官として」

ギロリ、と睨まれてますます溜め息が出そうになるが、仕方ない。

「承知いたしました」











 私たちは、例の旅禍達のいる町へと降り立った。

、ちゃんとついて来んのよ〜?」

さん、具合悪くなったら言って下さいよ」

「お前らなぁ、に対して過保護すぎんだよ!」

そんな会話を聞きながら、みんなの後ろを半歩下がって歩く。

 現世って所は、私にしたら珍しいものが沢山あるから。

キョロキョロとしているうちに、どうしてもみんなから遅れを取ってしまう。





「ねぇ、乱菊。あれはな……に?あれ?」



 気づけば、前を歩いている筈のみんなの姿が見えなかった。

「あれ?乱菊?……迷子になっちゃった?」



 あたりを見渡せば、既に真っ暗になっていた。

「……怒られる!!」

みんなに怒られると思って急いで霊圧を探ると……。







「あれ……おかしいな」



 気がつかない筈がないくらいの、霊圧の衝突があちこちで起きていた。

「どーゆう……こと?」

いくつかの場所に散ってはいるものの、戦っていると思われる霊圧はよく知るものの霊圧ばかり。

「乱菊、日番谷隊長、恋次!」

相手の霊圧は……とてつもなく大きく、得体の知れないものばかり。







 乱菊と日番谷隊長は一緒にいる。

「恋次……!!」

とりあえず恋次のサポートに向かおうと踵を返した時のこと。





「……!」

背中に、ゾクリと冷たい霊圧を感じた。

「この霊圧は……」

冷えきった、霊圧。だけど忘れる筈もない、とても良く知る霊圧だった。





「……ギン」

背中に感じる霊圧の持ち主。他には考えられなかった。

「さすがやわ〜。顔も見んとよお分かるな」

声と共に、背後に足音がした。

 だから、ゆっくりと振り返る。

「分からない訳ないでしょ。ギンの霊圧が分からないわけ、ないじゃない」



「せやね、

振り返った先にある、ギンのいつもの笑顔。

 あの日、見た笑顔。





「な、んで。何しに……来たのよ」

喉が詰まって、声が出ずらい。

 泣くもんか、泣くもんか!頭の中で強く思うけど、それは敵わない。





「何って、冷たいわぁ。。会いに来たに決まってるやない」

 悪びれもせず、そんな事を言うギンが悲しい。

「ずっと泣いとったやろ?ボクがいなくなってから、ずっと」

 何もかもを見通しているその目が、今は少し怖い。

「かわいそやから、迎えに来てん。藍染隊長も、やったら連れて来てもええって言わはったしな」

 甘くて苦い、ギンの言葉。







 でも、それに飛びつくわけにはいかなかった。

 あの日の私とは違う。

 みんなの為に、私はギンを選ぶわけにはいかないのだから。





「私、みんなのおかげで立ち直ったの。みんなが私を支えてくれた!

だから、ギンのいない生活も受け入れられた!なのに……なのになんで今更!?」

 ギンは一歩ずつ、私に歩み寄る。

。『なのに』やなくて『だから』やろ。がボクを忘れるなんて有り得へんやろ。

『だから』来たんよ。がボクを忘れないように」

 ギンは一歩ずつ、近づいて来る。

「ギン……?」



 その霊圧が、その目が、恐ろしい。

 狂気じみたギンの言葉が、恐ろしかった。



 なのに。

 なのに、振り払えない。私は……私は、





!!!」

 空を切り裂くような、そんな大きな声に……ハッとする。



!!」

顔だけで振り返れば、そこにいるのは体中に包帯を巻いた日番谷隊長だった。



「日番谷隊長……」

涙のせいでぼやける視界には、息を切らして険しい顔をする日番谷隊長が映っていた。

 目が合うと、隊長はいつものように馬鹿にしたように笑う。

「心配かけるんじゃねーぞ。ったく、いつまでたっても」

隊長が言った瞬間、ギンの霊圧が更に温度を下げた。



「邪魔せんといて下さいよ、十番隊隊長さん」



 ギンの笑みが凍ったのが分かった。

「聞こえてます?」

そして2人は、互いに斬縛刀を抜いた。



、危ないから下がっとき」

「下がってろ!」





 何故、何故こんなこと……。

 私は、どうしたらいい?どちらかを選べと言われているのだと分かる。

 分かるけど、今ギンを目の前にしてそんなこと……。





 ごめんなさい、乱菊、恋次。

 ごめんなさい、日番谷隊長。

 ごめんなさい、ギン。



 選べないよ。



 どっちも大切なんだもん。選べないよ……。











どうしても、暗い感じに……;
ヒロインがあちこちで起きている霊圧の衝突に気がつかなかったのは、
ギンが邪魔していたから……みたいな。
こじつけ!?
…すみません;;



この作品は「碧露草」様の夢小説投稿作品です。
「碧露草」様、ご投稿有難う御座いました。

photo/Sky Ruins